HOME > 保育園の創立
保育園の創立
創立者 初代園長

          坂本喜美子


「何事にも時があり天の下の出来事にはすべて定められた時がある。・・神はすべてを時宜にかなうように造り、また、永遠を思う心を人に与えられる。それでもなお、神のなさる業を始めから終りまで見極めることは許されていない。」(伝道の書)全身全霊もって感謝をお捧げ致します。第一に神様に、白羊に関係のあった皆様に。それは何と多くの数えきれない方々のご愛とご協力によって育てられ今日の成長を祝して頂きましたことか。魂伏して「神様ありがとうございました!皆様ありがとうございました!」と御礼申し上げる外なき身でございます。
白羊保育園の誕生の歴史、それは祖国日本の負戦のときでした。若いわたしの目に映るのは子どもたちの動揺する姿でした。 “日本の子どもたちよ、これ位の事で負けてはなりません"と自らの心を励まし、“イエス様このか弱い子どもたちの中に、どんな淋しい時も、怖い時にも、いつも共にいて守って下さるイエス様を知らせる事が出来ますように"と祈って立ち上がり、未だ煙っている所もある焼野が原となった熊本市街をミッションの幼稚園に紙芝居を借りに行き子どもたちに家の縁側で見せて上げる事だけが、その頃病気上がりの弱き身に出来る唯一の小さな事でした。しかし、子どもたちは「姉ちゃんのところに行こう」と数を増やし、そのうちに復員してきた主人と粗末な小屋の新家庭に、朝毎「姉ちゃん遊ぼう」と、主人の出勤前からの訪問、一日中遊んでいるのです。新聞紙で折り紙、ボタンでおはじき、…時が経つと近所のお母さんが子どもさんを連れて「お願いします」と頼みに来られる様になり、主人は砂場をつくり、ブランコ、鉄棒と、未開の地(父の敷地)の広いのを幸いに子どもの遊び場が作られてゆきました。そして神様は良き助け人を与えて下さり、保育案を立て保育がなされ、讃美歌、お話し、お祈り、おゆうぎ…と子どもの生活が始まり、はじめてのクリスマス礼拝と祝会が開かれ子どもたちのご家族と共に大きな恵みをおうけしました。又父が、「子どもを愛する事はいいな!あんたが子どもたちを一生懸命に可愛いがるので、子どもたちの為に家をあげよう」と、集めていた建材を提供し、父と母が凸凹の地を作業服に身をかため切り開き始め、電蓄ほか当時家にある良きものはお金に替え遂に、願っていた“子どものために"という木造瓦葺きの家が、汗と涙をもって建て上がったとき、もはやわたしの動揺する魂も、燃えざるを得なくなったのであります。
昭和二十三年十月「白羊保育園」と命名、如何に黒い羊 (弱い体、暗い心、悲しい運命…)でも、神様によって白い羊(丈夫な体、明るい心、お役に立つ希望の人材)と祝福されてゆく子どもの家として、児童福祉法による保育園として新たな心で出発しました。それは実に、子どもを愛されるイエス様が、「幼な子らをわたしの所に来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である」と、子ども達への保育目標「愛(さるるもの)→信頼 (をもつ)→感謝(ありがとうの心)→奉仕(自分の出来る事への協力)」、草深い島崎の地に楽しい神の子どもの家として基を据えたのでありました。当初五十名の定員でしたが、希望なさる家庭が多くなり、それに答えるために、両親と親族の助けによって増築、定員五五名の子どもたちを迎えることが出来、母の会の協力によって広い運動場も与えられ「白羊、子どもの国」は子どもたちを囲み、お母さん達、先生達と一つになって愛の園として祝され、白羊の心は愛に燃えておりました。ある時、牧師先生が「あなた達の熱心な働きは貴い、しかし、今の時代にこの事業を運営していく事は個人的では行き詰まる。あなた方の働きが末永く祝されるよう教会にお捧げしては?…唯、教会はあなた達の純真な働きが何時迄も続いてほしいと願うのです」と、この事に関し、家族の反対もありました。兄とわたしは祈り、考え(当時は、未だ信仰をあきらかにする事が、さまたげを受ける時でした。)わたし達が卑怯な心をおこしてキリスト様に旗あげすることをおそれる様な白羊保育園とならないように、何時でも堂々と「ここは神様の聖名によって立てられている保育園です」と、キリスト様に旗あげするため決断し、お捧げして、日本福音ルーテル教会の白羊保育園となったのであります。
当時、希望者が多く、子ども達のために定員を九十名に増やさなければという願いが日増しに強くなり、他人様に重荷を負って頂く前にまず、親族の協力を得て、心新たに母の会、現役員、旧職員に願いました。すると全力あげての協力があり、美しい園舎、実に麗しい九十名の園児のための増築が完了したとき、園児の家庭、地元の方々、教会関係、各保育園、県、市関係、他…と集って下さり、「幼な子の泣き声を聞き上げ給う天の神」が、子どもたちのために愛の心を集めて下さり、わたし達の思いを遙かに越えて、この様に美しい園舎を与えて下さったことを神様に感謝を捧げ、協力して下さった皆様のご愛に心こめて感謝を申し上げたのでございます。「白羊」の創めより今日まで、さまざまなことがらは他と同じく洩れなく受けて参りましたが、神様は、どの様な時も豊かに深いご愛をもって助け導いて下ました。親愛なる皆様いよいよ「白羊」の子ども達が“地の塩、世の光り"として本当にお役に立つ人材としての基が育てられますようにお祈り下さい。「白羊」の門をくぐると、石碑に深く刻まれた天の神様だけが下さることの出来る人間への最高のプレゼント「信仰、希望、愛」が目にとまります、在園児、卒園生、各家庭、先生方はじめ関係ある皆様方、そして我ら一同の上にいよいよ祝福して下さいますよう感謝をこめ祈って止みません。最後にもう一度皆様ありがとうございました」